徐々に寒さも和らぎつつも、世界的に新型肺炎が流行しているこの頃、皆様とお身内の方々はいかがお過ごしでしょうか。正体がまだ分からぬ病気に対し、不安な日々をお送りの方もおられると拝察いたします。親しい範囲にも、医療関係者や、満員電車通勤者が多いため、皆様のご健勝をお祈りする気持ちもいや増しております。

お彼岸のお参りが近づいておりますが、くれぐれもご自身の体調を第一においといください。

当山寺庭の沈丁花がほころび始めました。お見舞い代わりになれば良いのですが。

私事で恐縮ですが、私も1月下旬よりかなり悪性の風邪をひき、数日に及ぶ高熱や、数週間に及ぶ喘息症状が出てしまいました。検査の結果インフルエンザや新型肺炎ではなかったのですが、こんな苦しい症状の風邪を誰にも移したくない、他の寺院の方にお勤めをお任せするべきかと悩みました。ともあれ、「せっかくご縁を頂いている各家のご法要なのだから、是非自分自身でお勤めしたい、しかし私の勝手で皆様に病気を移すわけにはいかない」というせめぎ合いでした。

ところが、ご法要の日取りの2日前になると、みるみる熱がひき咳がおさまるという不思議な状況が重なり、なんとか無事に、3週間に渡り週末のご法要をお勤めすることが叶いました。世の中には理由の分からないことも多々ありますが、今回は亡き檀信徒の皆様方が応援してくださってるような心持になりました。

浄土宗のご法要でお唱えする「表白(※1)」という言葉にこんな一節があります。

「冀(こいねが)わくば、この功徳(くどく)により、速やかに菩提(ぼだい)を増長し、彼の土において正覚(しょうがく)を得、再び此の世に還り(かえり)来たりて有縁の我らを教え導き給え」。

現代語に訳すと、「阿弥陀様、どうぞ亡き方々をよろしくお願いします。ご法要を通じ、私たちの功徳、亡き方々への心からの気持ちが応援となって、極楽の皆様が悟りへの道を速やかに歩まれますように。そして極楽浄土の皆様が悟りをひらき、再びこちらの世の中へ戻って、私たちを導いてくださいますように」という意味です。

私とご遺族の皆様方が、心よりのお気持ちを亡き方々に手向ける事により、周り巡って亡き方々への応援に繋がり、今を生きる私たちへの力に繋がる。それがこの「表白」の意味なのではないかと存じます。浄土宗を開いた法然上人も、「もしできるなら自分の親が生きていた世代、誰も浄土宗を知らなかった世代へさかのぼり、人の力になりたい」と言っておられます。

現在、病を抱えた方々に対し、極楽浄土の亡き方々が心の支えとなってくださるよう、並びに、日々精一杯生活している皆様に良いお導きがありますよう、ご祈念いたしております。合掌

・(※1)表白:今回のご法要がどんな方に、どんな趣旨(回忌法要、納骨法要など)でお勤めするかを仏様にお伝えする言葉