皆様こんにちは。お彼岸も明け、衣替えの季節となりました。
当山でも10月をめどに、夏物の衣から冬物の衣へ切り替えております。
元来お寺では、皆様のお志の賜物である衣や袈裟をとても大切にしており、
来歴ある寺院では百年、二百年前の袈裟が保存されているそうです。
当山の衣は残念ながらそこまで歴史のあるものばかりではないのですが、
修行が終わり僧侶となった12年前に頂いたお袈裟を、今も大事に使わせていただいております。
88年後に、このお袈裟が無事に紀寿を迎えてくれたら素敵なことですね。

衣服で思い出されるのが私の母の手仕事です。
私が小学生だった30年ほど前、母は私たちの服を自作したり、
市販のものにワンポイントの手間をかけて可愛らしいものにしてくれました。
当時は今より市販の洋服がずいぶん高価な時代でしたので、
母にとっては節約のためだったのかもしれませんが、娘の私にとっては
どれも世界に一つだけ、自分だけのために作ってもらった宝物でした。
今は安価な服が手に入る一方、手作りの小物のネット販売が人気だそうですが、
「誰かが心をこめて作ってくれた」ことが嬉しいことだからかもしれません。
一からすべて手作りするのは大変なことですが、ちょっとしたひと手間でも
もらった方は嬉しいものです。

また、仏教では「無財の七施」という教え(※1)があります。
「お金をかけずに大きな功徳を得られ、幸せなことがたくさん起きる七つのお布施」という意味です。
簡単にご紹介いたしますと、
1、眼施:やさしい眼差し
2、和顔施:ほほえみ
3、言辞施:暖かい言葉
4、身施:お辞儀や手助けなど、体を使ったお布施
5、心施:まごころ、思いやり
6、床座施:自分の席を譲ること
7、房舎施:雨露をしのぐことを助けること。お客様をもてなすこと
となります。
「笑顔であいさつと会釈」だけでも、1~4を満たすことができますし、
「亡き方に心を手向けてお念仏」は4,5のお布施にあたります。
乗り物の席を譲ること、雨の時に傘を差しかけることも立派なお布施の一つなのです。

一つ一つは小さく見えますが、こちらがほんの少しのことと思っていても、
受け取った方は思いのほか喜んでくださっているのかもしれません。
「無財の七施」に目をとめていただくことで、皆様の日々がより心豊かで暖かなものになりますよう、
心よりご祈念いたしております。              
                           合掌

※1:『雑宝蔵経』
「 仏説(ぶっせつ)に七種(しちしゅ)の施(ほどこ)し有り。財物(ざいもつ)を損せず大果報(だいかほう)を獲(う)る。」