聖号十念

そぼ降る雨と、緑を渡る爽やかな風が交互に訪れる時節となりました。

去る6月10日(木)、18時より、大本山増上寺安国殿におきまして、12回目の自死者追悼法要「倶会一処~ともに生き、ともに祈る~」を厳修いたしましたことをご報告いたします。感染症予防のため、昨年に引き続き無参列でのYouTube中継という形式をとりました。

安国殿黒本尊(厨子内)の御前立ち・阿弥陀仏像

視聴者の方には正面からの様子をご覧いただきました。

横の襖が少し空いておりますが、照明兼トラブル係(私)が控えておりました。

法要後、導師より、「阿弥陀様は自分を頼ってくださる方のみならず、『亡き方を思う人の心』をお汲み取りになり、亡き方を必ず救い取り、極楽浄土に導いてくださる仏様です」とお伝えさせていただきました。

また、仏教タイムズ様より、6月17日の紙面にて、自死者追悼法要を記事にしていただきました。

YouTube中継という方式は、人によってはなじみがなくうまく視聴ができない媒体でもありますが、「お仕事柄当日都合がつかない」「遠方でお参りができなかった」方からは「これからも続けて欲しい」というお声も頂戴しております。申込の手段を増やした結果、ご供養の数や視聴人数も昨年より増えました。

ですが、「お申込みや視聴者が増えた」ということは、「それだけ多くのご遺族がおられる」ことの証左でもあります。この一年余り、様々な事情を抱えた方からのお悩みをお聞かせいただきました。働く機会をなくした方も、過労で体調を崩される方も、立場は違えど此度の災禍の被害者です。各方面のご尽力でワクチン接種の加速度は増しておりますが、まだしばらく様々な影響が予測されます。ここ数週間の報道を見る限りでも、辛い選択をされた方が増えているように見受けられます。

当山といたしましても、やむを得ないご事情に寄り添える寺院となれるよう努めて参りたいと存じました。

来年以降の開催につきましては、感染収束の暁には、再びともに集う場所を保ちながら、オンライン中継も併用するべく検討中です。仏前でのお焼香の際など、現地参列者のプライバシーを守りつつ、ともに手を合わせ、ご供養を続けさせていただければと存じます。

浄土宗のお題目「南無阿弥陀仏」は「どうぞ阿弥陀様、亡き方をよろしくお願いいたします」という祈りと願いの言葉です。亡き方が御存命中どのような状態だったか、お心持ちであったか、この世の私たちには100%身代わりになって知るすべはありません。ですが、阿弥陀様は全てのご事情をつぶさにお汲み取りくださり、「辛かったですね。お疲れ様でした。これからはもうずっと大丈夫ですよ」とお声がけくださる仏様です。また同時に、遺された方々に対しても無理な対応を強いることはありません。

ご家族お身内に限らず、ご縁のある方でもし行く末にお気がかりの方がいらっしゃれば、どうぞその方のために、いつでもどこでも、1回でも10回でも沢山でも、思いを手向けて「南無阿弥陀仏」とお唱えください。阿弥陀様は必ず太いご縁を繋いでくださいます。

私ども僧侶も、あらゆる方々のために日々お念仏をお唱えして参ります。合掌

天災地変 殉難横死 三界萬霊 有縁無縁 乃至法界 平等利益 南無阿弥陀仏

(人の手ではどうにもならない災いにより、困難に遭い命を落とされた方々がいらっしゃいます。今まで仏様と縁のあった方もそうでない方も含め、あらゆる場所におられる全ての方々に、等しく仏様のご利益がありますよう、どうぞ阿弥陀様のお力添えをよろしくお願いいたします。)