聖号十念

梅花の咲き誇る季節となりました。東京都は依然状況がはかばかしくなく、当山も春の彼岸会を無参列開催とした次第です。

皆様方のお顔にまみえること叶わず残念な気持ちではありましたが、「お客様がお見えになれない時にしかできないことをしよう」と思い立ちました。

実は長年、客殿ではごくまれに雨漏りが発生しておりました。台風級の大雨の時だけで、バケツを置けば防げる程度、オリンピック前で業者さんも忙しく、調査や修理が延び延びになっておりました。また、寺務所の天井裏に猫のような生き物の気配がしておりましたが、屋根の上で猫が日向ぼっこでもしているのだろうかと思っておりました。ところがある日寺務所の一部が停電。

この際きちんと調査をお願いするという運びとなり、天井板を剥がしていただいたところ…

(松光寺客殿天井)

客殿と寺務所が天井裏でつながっていたことが判明しました。

また、ハクビシンが断熱材を剥がして巣を作っていた形跡が発見されました。幸いというべきか、ご本人(獣?)は不在でした。お寺の天井裏にはつきものの獣のようですが、フンなどが建物を傷めてしまうので、港区では害獣に指定されています。屋根の上ではなくまさか天井裏にいたとは。当山本堂は築150年以上経過しており、夏暑く冬寒いのが当たり前だと思っていましたので、断熱材がハクビシンの家になっていたとはついぞ気づきませんでした。

別荘を失うハクビシンには申し訳ないのですが、雨漏り箇所や侵入箇所をふさぎ、天井裏を消毒、改めて断熱材を設置し、長年風雨に晒されて傷んだ箇所も修繕をお願いいたしました。皆様により良い環境で時を過ごしていただけるよう、今後とも努めてまいります。

また、今回のあれやこれやで改めて「諸行無常」、全ての物は移り変わっていくものだと実感いたしました。客殿が建築されたのは25年前、四半世紀前のことです。当時の私は大学に入ったばかりで、自分のことだけで精一杯でした。以来、赤ちゃんが一人前になるほどの時間が経ちましたが、果たして自分はどれほど成長したものだろうかと考えさせられます。法務は今のところ大方無事にお勤めさせて頂いておりますが、両親も存命ですので、「共に暮らした人を喪った経験がない」点では僧侶として経験不足と思われる方もあるかもしれません。今後とも、各家のご事情やお話に、より親身に寄り添う僧侶となるべく精進する心持となりました。

ワクチン接種の開始でほんのりと好転の兆しも見えてまいりました。皆様が心置きなく安心して、有縁の方々と共に過ごせる時が訪れますよう、父ともども祈念いたしております。合掌

如来大慈悲 哀愍護念 南無阿弥陀仏