聖号十念

寺庭の藤も青々と蔓を伸ばす日々となりました。新たに病を得る方の数は減りつつこそあれ、皆様それぞれのお立場で様々なご心痛をこらえつつお過ごしのことと存じます。

当山の御本尊は「阿弥陀仏(=阿弥陀如来)」ですが、仏教には阿弥陀様の外にも多くの仏様がおられ、それぞれ得意分野をお持ちです。現在は「薬師(やくし)如来」様が尽力されていることと拝察します。薬師如来様は「人々の心身を病などの苦しみから守り、仏の道を歩むことを助けたい」と誓われた仏様です。

国宝・奈良国立博物館収蔵 薬師如来坐像

浄土宗は、阿弥陀様以外の仏様や、他の宗派を否定することはせず、むしろ互いに応援し合うことを旨としております。「仏の道=悟りへの道」はしばしば「山登り」に例えられます。崖のような険しい道を歩むような修行を通じて、人を助ける力(=法力・ほうりき)を得ることを目指す宗派もあります。日頃厳しい訓練を積んでいる方々が、困っている方を助けている様が思い起こされます。また、優れた技術を持つロッククライマーを見て、「自分もあんな風になりたい」と勇気づけられる方もいらっしゃるでしょう。しかし、全ての方が同じような修行に耐えることは残念ながら無理ですし、僧侶自身も多くの方にお世話にならねば修行もままなりません。一方、阿弥陀様は「誰も取り残されることのないように」と、なるべく歩みやすい道(=お念仏)を選び、仏の道を歩む方々のしんがりを務める仏様です。薬師如来様は道中のケガや病気から守ってくださる仏様といえるでしょう。また、道を外れたことに気が付かない人を叱る役割の仏様や、その他多くの菩薩様がおられます。いずれの仏様や菩薩様も、「俗世の苦しみから皆を救い、皆が悟りを得ることを応援したい」と願っておられます。

病の終息後に、よろしければ是非お寺にお参りくださり、様々な仏様に出遭っていただければ幸いです。仏様のご加護を祈念いたしております。合掌

如来大慈大悲 哀愍護念 南無阿弥陀仏