秋も深まり、いよいよ冬の気配が見えてまいりました。本年は「勤労感謝の日」が土曜日のため、サラリーマンの私の夫を含め、がっかりされている方もおられるのではないでしょうか。

「勤労感謝の日」とは、もともと「新嘗祭(にいなめさい)」と呼ばれ、その年収穫した作物に感謝する祭日だったそうです。戦後、GHQの政策により天皇行事・国事行為から切り離された名前となりました。子供の頃は「はたらく人に感謝する日」だと思っていましたが、就職氷河期の頃は「勤労できるだけ有難いと思えの日」ではないかと仲間内で冗談が飛びかったことを覚えています。

閑話休題、本年は令和元年ということで、天皇陛下が「大嘗祭(だいじょうさい)」をおつとめになられました。全国各地の作物を神様にお供えし、五穀豊穣に感謝し、祈念する行事だそうです。即位の礼やパレードも感動的でしたが、災害の多かった本年、深夜に至る長時間の行事を終えられた陛下のお姿に心打たれました。宗派は違えど、少しでも早く被災地の復興が成され、より良い実りに恵まれますよう、祈念の気持ちがわきました。

浄土宗にも、「食前の言葉」という五穀に感謝する一節があります。

「ほんとうに 生きんがために 今この食をいただきます。与えられたる 天地の恵みに 感謝いたします」

「いただきます」の前にお唱えする言葉です。古来より今に至るまで、私たちの口に入るものは「天の恵み」である太陽と雨、地の恵みである土によって育まれ、火や電気によって調理されています。現代では「地下工場のLED電球で育つ野菜や果物」が登場したそうですが、電力の元もやはり地の恵みです。

今日、目の前の食事がどこから来たのか、どんな方が調理してくださったのか、想像を巡らせつつ味わうことで、より美味しく召し上がっていただけるのではないかと存じます。また、自分の命を繋いでくださる方々への感謝の気持ちをもって日々を過ごすことが、「ほんとうに生きる」ことの意味にも繋がるように思います。

皆様の日々のお食事が、より味わい深いものになりますよう、ご祈念申し上げます。合掌