本格的な冬の訪れとともに、そろそろ大掃除の算段を考える時期となりました。皆様も日々清潔に気を付けつつお過ごしのことと拝察いたします。急な法務で記事の公開が一日遅れましたことをお詫び申し上げます。

本日は「ご縁」をテーマとしてお話をさせていただきます。当山は松平家、細川家などの大名家や有縁の方々の江戸菩提寺です。20数年前に墓所を整理した際、永代供養させていただいた方もおられますが、今でも「松光寺」の由来を頂いた、

「松光院殿(しょうこういんでん)」様の大きな墓所と、二番目に大きい

「貞亮院殿(ていりょういんでん)」様のお墓をおまつりしております。

このお二方の女性と私との間には不思議なご縁がございます。

まだ僧侶の資格を取る前、浄土宗はおろか仏教のこともおぼつかなかった私に、宗門より「蓮社号(れんじゃごう)と譽号(よごう)を決めておくように」という指導がありました。父に訊いても良く分からないのですが、どうやら自分につける名前のようです。私は悩みました。何故なら、中学時代から大学時代に凝り過ぎたペンネームを名乗ってしまい、後々大変恥ずかしい思いをしたためです。(例えるなら神薙月と書いてカンナギと読む等。カンナギなら月は必要ないと思うのですが、入れたかったのですねえ…月。)

そんな中、尊敬する叔母が私を食事に誘ってくれました。細々とした悩みを話す中、「そうだ、叔母夫婦の感性にあやかろう」と思いつき、従兄弟二人の名前から一文字ずつ拝借する許しをもらいました。その二文字が「昌」と「泰」の字です。以来「泰蓮社昌譽(たいれんじゃしょうよ)」が私の号となりました。

それから十数年後に住職を拝命した際、ふと「そろそろ拙かった卒塔婆の文字もどうにか見られる程度になってきた。今までは畏れ多くて思いつきもしなかったが、長年当山を見守ってくださっている松光院殿様と貞亮院殿様にも卒塔婆供養をしたい」と思い立ちました。墓所のお戒名を改めて確認したところ、なんと「松光院殿」様のお戒名に「昌」の字が、「貞亮院殿」様のお戒名に「泰」の字が含まれていたのです。仰天いたしましたが、同時にお二方との時を超えたご仏縁とお導きを感じました。

檀信徒やご遺族の方々のお話の中でも、「夢枕に立った」「虫の知らせがあった」など、不思議なご縁について伺うことがございます。科学で証明できることではありませんが、現世でも相手に「気持ちが伝わった」、相手の「気持ちが分かる」と思える時があるように、亡き方の気持ちが伝わってきた、と思える瞬間もありえるのではないかと存じます。

また、浄土宗では「阿弥陀様との三つのご縁」として「三縁(さんねん)」という言葉がございます。増上寺の山号にもなっている言葉です。

一つ目は「親縁(しんえん)」。皆様が心から手を合わせてお念仏をお唱えくだされば、阿弥陀様も皆様のことを思ってくださるという親しいご縁です。

二つ目は「近縁(ごんえん)」。皆様が阿弥陀様のお姿を見たいと願ってお念仏の行を続ければ、時が満ちたとき阿弥陀様はお姿を現してくださるという近しいご縁です。

三つめは「増上縁(ぞうじょうえん)」。お念仏には「罪を滅していく」という効果があるので、皆様がお念仏を唱えることで、昔の過ちや罪が少しずつ減り、命の終わりを迎えられるときには必ず阿弥陀様や数々の仏様がお迎えにきてくださる、というご縁です。もはやお詫びのしようもない時や、「ごめんなさい」を言う相手がもうこの世にいない時などにはお念仏をお勧めしております。

このように、阿弥陀様はいつも思い通りにならない現世を生きる私たちに寄り添い、助けになりたいと願っておられます。

時節柄、なかなか故郷の家族や仲間とともに過ごすことが難しく、寂しい思いをされている方もおられるかと拝察いたします。本年は、阿弥陀様への祈りの気持ちや亡き方々へのご供養の気持ちとともに、お互いの無事を願ってお念仏をお唱えくだされば、阿弥陀様は必ずそのお気持ちをお汲み取りくださいます。

晴れてお集りが叶った際には、皆様のご縁がより親しく、近しく、いや増しますようご祈念しつつ、本年最後の記事の結びとさせていただきます。新たな年が少しでも明るいものになりますよう。合掌礼拝

如来大慈悲 哀愍護念 南無阿弥陀仏